墓地には固定資産税がかかりません。これは地方税法第348条第2項第4号において、墓地が固定資産税の非課税対象として明確に定められているためです。所有者が個人であっても宗教法人であっても地方公共団体であっても、墓地として使用されている土地には一律に固定資産税が課されない仕組みとなっています。この記事では、墓地が非課税とされる法的根拠や背景にある考え方、さらに納骨堂との違いや相続税との関係まで、墓地と固定資産税にまつわる疑問を幅広く解説していきます。お墓の購入や相続を検討している方にとって、知っておくべき重要な知識をまとめています。

固定資産税の基本的な仕組みと非課税の考え方
固定資産税とは、土地や建物、償却資産といった固定資産を所有している方に対して、その資産が所在する市区町村が毎年課税する地方税です。課税の基準となるのは「固定資産税評価額」であり、税率は原則として評価額の1.4%となっています。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となり、土地や建物を所有している限り、基本的には毎年この税金を納める必要があります。
ただし、地方税法ではすべての固定資産に課税するわけではなく、一定の固定資産について非課税とする規定を設けています。非課税の対象となる財産は、大きく「人的非課税」と「物的(用途)非課税」の2種類に分かれます。人的非課税とは、国や都道府県、市町村などの公共団体が所有する固定資産に課税しないというものです。一方、物的非課税とは、所有者の属性にかかわらず、その固定資産が特定の用途に使われている場合に非課税とするものです。墓地が非課税とされているのは、この物的(用途)非課税の一種にあたります。
墓地が非課税とされる法的根拠は地方税法第348条
墓地の固定資産税が非課税とされる直接的な根拠は、地方税法第348条第2項第4号にあります。この条文は「固定資産税の非課税の範囲」を定めたものであり、第2項では用途に着目した非課税対象を列挙しています。その中の第4号に「墓地」が明記されており、墓地に使用されている固定資産については固定資産税を課してはならないと定められています。
ここで注目すべき重要な点があります。同条が規定している他の非課税対象、たとえば宗教法人の境内建物や境内地は同項第3号で定められていますが、こちらは「宗教法人が専らその本来の用に供する」という条件が付されています。これに対して「墓地」については、所有者が誰であるか、経営主体がどこであるかという条件が一切設けられていません。つまり、宗教法人が経営する墓地であっても、地方公共団体が経営する公営墓地であっても、個人が所有する個人墓地であっても、墓地として機能している土地であれば一律に非課税となるのです。
また、多くの市区町村では「墓地」の定義について「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」を参照しています。墓埋法第2条第5項では「墓地」を「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域」と定義しており、各自治体の固定資産税担当部署はこの定義に基づいて非課税の判断を行っています。
なぜ墓地は非課税なのか?3つの背景にある考え方
法律上「墓地は非課税」と明記されていますが、そもそもなぜ墓地を非課税とする必要があるのでしょうか。その背景には3つの重要な考え方があります。
第一の理由は、墓地の持つ公共性と公益性です。墓地は単に土地を利用する施設ではなく、国民の死生観や宗教観、文化的伝統と深く結びついた場所です。先祖の遺骨を埋葬し、子孫が供養のために訪れる場所としての墓地は、社会的にも精神的にも非常に重要な役割を担っています。このような公益性の高い施設に税を課すことは、社会政策的な見地から適切ではないと考えられています。
第二の理由は、墓地の用途の特殊性にあります。固定資産税の課税根拠は、その財産から得られる経済的便益に「担税力」、つまり税を負担する能力が生じるという考え方に基づいています。しかし墓地は、埋葬や供養という特定の宗教的・文化的目的のみに利用される土地であり、一般的な意味での経済的利益を得ることは想定されていません。そのため、担税力がないと判断されることも非課税とされる大きな理由のひとつです。
第三の理由として、墓地は営利目的での活用が法律上厳しく制限されていることが挙げられます。墓地の経営については墓埋法により厳格に規制されており、営利企業が直接経営することは原則として認められていません。土地としての流動性や収益性が著しく制限されているため、一般の不動産と同様に課税することは適当でないと考えられているのです。
墓埋法による墓地経営の厳格な規制とは
墓地の非課税を理解する上で欠かせないのが、「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)、いわゆる墓埋法です。墓埋法は、墓地や納骨堂、火葬場の経営、遺体の埋葬や火葬について規制する法律であり、第10条では「墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない」と規定しています。つまり、墓地を経営するためには行政の許可が必要であり、無許可での墓地経営は法律違反となります。
さらに、墓地の経営主体については、厚生労働省が「墓地経営・管理の指針等について」という通知を発出しており、その中で墓地経営主体は市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情がある場合でも宗教法人または公益法人等に限るとされています。この規制により、株式会社などの営利企業が直接墓地を経営することは原則として認められていません。民間の霊園(民営霊園)であっても、宗教法人や公益財団法人が経営の主体となり、不動産会社などはあくまでも販売代理などの業務を行うにとどまります。
墓地が「公益性の高い施設であり、永続性を担保しなければならない」という考え方がこの規制の根底にあります。墓地は一度開設されると、長期間にわたって維持・管理が必要であり、営利企業が経営を担った場合、経営不振や倒産によって管理が滞るリスクがあります。このリスクを最小化するために、非営利の主体のみが経営できるとされているのです。このような厳格な規制のもとに置かれた墓地に対して固定資産税を課すことは、その公共的な役割を損なう可能性があることから、税法上も非課税として社会的に保護されています。
墓地の種類ごとの固定資産税の扱い
墓地にはいくつかの種類があり、それぞれについて固定資産税がどのように扱われるかを確認しておくことが大切です。
公営墓地は、都道府県や市区町村などの地方公共団体が経営する墓地です。行政が経営主体であることが最も明確であり、固定資産税の非課税対象となることに疑いの余地はありません。地方税法第348条第1項による「人的非課税」と、第2項第4号の「物的非課税」の両方が重なる形となり、非課税の根拠が特に強固です。都市部では都立霊園や市営霊園がこれにあたります。
寺院墓地・宗教法人が経営する墓地は、お寺の境内に設けられた墓地や、宗教法人が許可を受けて経営する霊園です。地方税法第348条第2項第4号の「墓地」の非課税規定が適用されます。宗教法人には同条第3号に境内建物・境内地に関する別の非課税規定もありますが、「墓地」については第4号の規定が別途存在するため、宗教法人の所有であるかどうかを問わず非課税となります。
民営霊園は、宗教法人または公益財団法人が経営主体となり、民間企業がその管理・販売業務を受託している形態の霊園です。経営主体は宗教法人または公益法人ですので、地方税法第348条第2項第4号の適用を受け、固定資産税は非課税となります。
個人墓地は、農村部や地方に存在する個人や地域の共同体が管理する小規模な墓地で、いわゆる「みなし墓地」と呼ばれるものも含まれます。登記上の地目が「墓地」となっており、実際に墓地として使用されている土地であれば、固定資産税の非課税対象となります。ただし、地目が「墓地」になっていても実際には墓地として使用されていない土地については課税対象となる場合があり、逆に地目が「墓地」でなくても実態として墓地として使用されていれば非課税の対象となることもあります。判断はあくまでも実態に基づいて行われます。
墓地と混同されやすい「納骨堂」は原則として課税対象
墓地が非課税とされる一方で、納骨堂は多くの場合、固定資産税が課税されます。この点は墓地との大きな違いとして知っておく必要があります。納骨堂とは、骨壷に入った遺骨を安置するための施設であり、近年では都市部を中心にロッカー式や自動搬送式など、さまざまな形態のものが増えています。
地方税法第348条第2項第4号が非課税としているのは「墓地」のみであり、「納骨堂」は別扱いとなります。納骨堂が非課税となるためには、それが「宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物」として認められる必要があります。
実際の判例として、宗教宗派を問わず誰でも利用できる形態の自動搬送式納骨堂に対して固定資産税・都市計画税を課した事例があります(東京地判平成28年5月24日)。この裁判では、宗教活動の場としての性格が薄く、ほぼ有料の施設として機能していた納骨堂に対して課税することが適法であると判断されました。このため、近年増加している民間主導の納骨堂については、固定資産税が課税される可能性があります。宗教活動との結びつきが弱い納骨堂は、非課税とは認められないケースが多い傾向にあります。
一方で、宗教法人が経営し宗教活動の一環として運営されている伝統的な納骨堂については、「境内建物」として非課税と判断される場合もあります。
墓石やお墓の建物に固定資産税はかかるのか
墓地の「土地」については固定資産税が非課税であることを説明しましたが、「墓石」やお墓に関連する建物についても確認しておきましょう。墓石は動産として扱われ、固定資産税の対象である「土地」や「家屋」にはあたりません。墓石は家屋として固定資産税が課税される「建物」でもないため、墓石そのものに固定資産税がかかることはありません。
墓地に建てられた管理棟や休憩所などの建物については、霊園・墓地の管理者が所有するものとして、その用途によって非課税かどうかが判断されます。宗教法人の境内建物であれば非課税となる可能性があります。
永代使用権と所有権の違いから見る固定資産税の関係
一般の霊園や墓地でお墓の「区画」を購入する場合、実際に購入しているのは土地の「所有権」ではなく「永代使用権」です。永代使用権とは、その墓地区画を永続的に使用する権利であり、所有権とは異なります。土地の所有権は霊園や墓地の経営主体である地方公共団体や宗教法人が持ち続け、利用者はその使用権を取得するにすぎません。
そのため、お墓の区画を購入した個人に対して固定資産税が課税されることはありません。固定資産税はあくまでも土地・建物の所有者に課税されるものであり、使用権者には課税されないからです。そして、墓地そのものの所有者である経営主体にも、地方税法第348条第2項第4号の非課税規定により固定資産税は課されません。
固定資産税以外の税金と墓地・お墓の関係
墓地やお墓に関わる税金は固定資産税だけではありません。他の税目との関係も整理しておきましょう。
相続税については、お墓や墓地、墓石、仏壇、仏具などは「祭祀財産」と呼ばれ、相続税法第12条第1項第2号により相続税の非課税財産とされています。「墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は相続税の課税価格に算入しないと定められているため、被相続人が墓地や墓石を所有していても、その価値は相続税の計算に含まれません。これは祭祀財産が社会的・文化的に重要な意義を持ち、一般の財産と同様に課税することが適当でないという考え方に基づくものです。ただし、お墓をローンで購入して残債が残っている場合は、その残債を債務控除することができない点には注意が必要です。
贈与税についても、お墓や仏壇、仏具などの祭祀財産を生前に贈与された場合は原則として非課税となります。ただし、骨董品的な価値を持つ仏像など、祭祀的な価値よりも財産的価値が著しく高いものについては、課税される可能性があります。
消費税については、墓地の「永代使用料」は土地の使用権の設定に準ずるものとして非課税とされています。一方で、墓石代や墓石の工事費、年間管理費については消費税が課税されます。永代供養料など法要・供養サービスに関する費用についても同様に課税対象です。つまり、お墓の購入時には「永代使用料は非課税、墓石代・工事費は課税」という区分けがあります。
不動産取得税・登録免許税については、墓地の永代使用権を購入する場合は土地の所有権を取得するわけではないため、これらの税金はかかりません。
都市計画税も墓地は非課税
固定資産税と合わせて課税されることが多い都市計画税についても、墓地は原則として非課税です。都市計画税は地方税法第702条の2において固定資産税の非課税規定を準用しており、固定資産税が非課税とされている土地・建物については都市計画税も課税されないとされています。このため、墓地については固定資産税と都市計画税の両方が非課税となるのが原則です。納骨堂については、宗教活動との結びつきが弱い場合、固定資産税とあわせて都市計画税も課税される可能性があります。
お墓の生前購入が相続税対策になる理由
「お墓を生前に購入することが相続税対策になる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。相続税の計算では、被相続人が死亡時点で保有していた財産の合計額から基礎控除額などを差し引いた金額に税率をかけて税額を算出します。お墓は相続税の非課税財産ですので、生前にお墓を購入していれば、その購入金額分の財産が相続財産から減少します。結果として相続税の課税対象となる財産が減り、相続税額を抑えられる可能性があります。
たとえば、300万円の現金をそのまま相続すれば課税対象財産に含まれますが、その300万円を生前にお墓の購入に使っていれば、お墓は非課税財産であるため課税対象には含まれません。この差が節税効果となるのです。
ただし、いくつかの注意点があります。まず、お墓をローンで購入した場合、生前にローンを完済していれば問題ありませんが、ローンが残ったまま亡くなった場合、その残債は相続税の債務控除の対象になりません。生前購入で節税を図るならば、現金一括払いが基本です。次に、必要以上に高額なお墓を購入することにも注意が必要です。あくまでも「祭祀を目的とした合理的な範囲」での購入が非課税の対象とされており、明らかに節税目的と判断される過大な購入は税務当局から問題視される可能性があります。お墓の購入時にはさまざまな費用が発生するため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
例外的に墓地でも固定資産税が課税されるケース
墓地は原則として非課税ですが、例外的に課税される場合もあります。
管理が放棄されて荒れ地化した場合は、本来墓地として使用されていた土地でも、長年にわたって管理が放棄され実質的に墓地としての機能を失ったと判断されると、税務当局によって「雑種地」などとして再評価され、課税対象となる可能性があります。固定資産税の非課税は「墓地として使用されている」ことが前提であり、その実態を失えば非課税の根拠も失われます。
墓埋法に基づく許可を取得していない場合も課税の対象となることがあります。多くの市区町村では、非課税対象となる「墓地」を墓埋法に基づく許可を受けた区域と定義しています。無許可で設置された墓地については、法律上の「墓地」として認定されず、非課税が認められない場合があります。ただし、墓埋法施行前の昭和23年以前から存在する「みなし墓地」については、従前からの実績が考慮され、非課税と扱われることが一般的です。
墓じまいを行い地目を変更した場合も、その土地はその後の固定資産税課税対象となります。墓地として使用しなくなった以上、非課税の根拠がなくなるためです。
墓じまいと固定資産税の関係について知っておくべきこと
近年、少子高齢化や家族構造の変化に伴い、お墓の管理が難しくなり墓じまいを検討する方が増えています。墓じまいとは、遺骨を別の場所に移す「改葬」を行い、現在の墓地を撤去・返還することを指します。
自分の土地に個人墓地がある場合の墓じまいでは、遺骨を改葬した後に墓地を撤去し、地目を「墓地」から「宅地」や「雑種地」などに変更することになります。この地目変更後は固定資産税の課税対象となるため、翌年以降の税負担を念頭に置いておく必要があります。
一方、一般的な霊園や寺院墓地における墓じまいでは、もともと土地の所有者は霊園・寺院であり、利用者はあくまでも「永代使用権者」にすぎないため、固定資産税については元から利用者には関係がありません。墓じまいにあたっては「離壇料」「撤去費用」「改葬許可証の取得費用」などが発生しますが、これらは税金とは別の費用です。
個人墓地(みなし墓地)についての固定資産税の扱い
地方によっては、正式に許可を取得した墓地ではなく、古くから家の敷地内や山中、田畑の端などに設けられてきた小規模な墓地が存在します。このような墓地は、墓埋法施行の昭和23年以前から存在するものが多く、法律施行後に「みなし許可」という形で既存の墓地として認められた経緯があります。
固定資産税の面では、地目が「墓地」として登記されており実際に墓地として使用されている土地であれば非課税の対象となります。ただし、市区町村によって判断基準が異なる場合もあるため、不明な点がある場合は各自治体に確認することが大切です。個人墓地を相続した場合も固定資産税は課税されませんが、墓地として使用する義務や他の用途への転用禁止などの制約があります。将来的に墓じまいをして更地にする場合は地目変更の手続きが必要となり、地目変更後は固定資産税の課税対象となります。
墓地に関するよくある疑問と回答
墓地と固定資産税に関しては、さまざまな疑問を持つ方が多いため、よく寄せられる質問について解説します。
樹木葬や合葬墓についても非課税になるのかという疑問がありますが、樹木葬は遺骨を土に埋葬して樹木を墓標とする埋葬方法であり、墓地として許可を受けた区域内で行われる場合は固定資産税が非課税となります。合葬墓も墓地として許可された区域内にあれば同様に非課税です。ただし、室内型の合葬施設で「納骨堂」として機能するものは、その形態によって課税される場合があります。
散骨した場所に固定資産税がかかるのかという疑問については、散骨は墓地以外の場所に骨を撒く行為であり、その場所は「墓地」とはなりません。散骨した場所を利用者が所有しているわけでもないため、税金の問題は通常発生しません。
海外に墓地がある場合については、固定資産税は日本の地方税であるため、日本国内に所在する固定資産にのみ課税されます。海外の墓地については現地の法律に従って課税の有無が決まります。
個人の土地にある墓地を相続した場合は、地目が「墓地」であり実際に墓地として使用されている土地であれば、相続後も固定資産税は非課税です。個人墓地の管理や手続きについては、市区町村に確認することをおすすめします。
まとめとして押さえておきたい墓地と固定資産税の重要ポイント
墓地が固定資産税の非課税とされている理由と根拠を改めて整理します。法的根拠としては地方税法第348条第2項第4号に「墓地」が固定資産税の非課税対象として明記されており、この規定は所有者や経営主体の属性を問わず、墓地として使用されている土地に広く適用されます。背景にある考え方としては、墓地の公共性・公益性が高く担税力がないと考えられること、墓埋法による厳格な規制のもと営利目的での活用が制限されていることが挙げられます。
一方で、「墓地」と似て非なる「納骨堂」は宗教活動との結びつきが弱いと判断された場合には課税される可能性があること、相続税・贈与税については祭祀財産として非課税とされること、消費税については永代使用料は非課税ながら墓石代等は課税されることなど、税目によって扱いが異なります。お墓と税金の関係は複雑に見えますが、「社会的・文化的に重要な役割を持つ場所は、経済的な担税力がないとして税を軽減・免除する」という基本的な考え方が貫かれています。お墓の購入や相続を検討している方は、専門家に相談しながら計画を進めることをおすすめします。








