実家の墓を継ぐ人がいない、マンション暮らしで仏壇を置く場所がない、自分の代で墓じまいをして負担を子どもに残したくない。そう考える人が、ここ数年で急に増えています。墓も仏壇も両方持たないと決めたときに選べる代表的な方法が、遺骨を自宅などに置いて供養する手元供養です。かつては墓と仏壇をセットで持つのが当たり前でしたが、今では複数人世帯の6割が仏壇を持たず、マンションなど集合住宅に限れば約8割が仏壇を置いていないという調査結果もあります。樹木葬を選ぶ理由の1位は「後継者が不要だから」で、約7割の人がこの理由を挙げているというデータもあり、承継者を前提としない供養のかたちは、もはや少数派とは言えなくなってきました。とはいえ、両方いらないと決めた後に「では故人やご先祖をどう供養すればいいのか」という壁にぶつかる人は少なくありません。この記事では、墓と仏壇の両方を持たない場合に選べる供養の選択肢、代表的な方法である手元供養の具体的なやり方や費用、墓じまい・仏壇じまいを進める際の手続きと注意点、そして家族間のトラブルを避けるための考え方まで、できるだけ具体的にまとめて解説します。

墓も仏壇もいらないと考える理由の中心は後継者不足と住宅事情
墓も仏壇もいらないという判断の背景にあるのは、少子高齢化と核家族化の進行です。承継者がいないお墓は無縁墓となり、管理されずに放置されるリスクが高まります。かつては長男が家と墓を継ぐことが前提でしたが、子どもがいない世帯や、子どもが遠方で暮らす世帯、子ども自身が墓を継ぐ意思を持たない世帯が増え、前提そのものが崩れてきました。
お墓をいらないと考える理由としては、継ぐ人がいないこと、維持管理が難しいこと、そして墓を持つこと自体が子どもの将来的な負担になると感じていることが挙げられます。散骨や樹木葬といった、よりシンプルな自然葬を望む価値観の広がりも大きな要因です。
仏壇についても事情は近く、時代とともに価値観が多様化し、仏壇の必要性を感じない世代が増えています。仏壇という形式にこだわらなくても供養する方法は他にもあり、自由に選べる選択肢が増えていることも一因です。住宅事情の変化も無視できません。仏間のある家が減り、コンパクトなマンションや賃貸暮らしが主流になる中で、大きな仏壇を置くスペースそのものが確保しづらくなっています。継ぐ人がいない墓と、置き場所も継ぎ手もない仏壇を無理に維持し続けるのではなく、いったん整理して新しい供養のかたちに切り替える選択が、現実的な選択肢として広がっているのです。
遺骨を自宅に置くのは違法ではない
お墓に納めずに遺骨を家に置いておくのは違法ではないかという疑問を持つ人は多いのですが、結論から言えば、遺骨をずっと手元に置いておくことは何ら違法ではありません。
日本の法律である墓地、埋葬等に関する法律、いわゆる墓埋法が規制しているのは、勝手な場所への埋蔵や収蔵であり、自宅で遺骨を保管すること自体を禁じる規定は存在しません。したがって、四十九日や一周忌といった節目で必ず納骨しなければならないという法的義務もありません。宗教的・慣習的な区切りとして納骨のタイミングが語られることは多いものの、それはあくまで慣習であり、遺族の気持ちの整理がついていなければ、無理に急ぐ必要はないのです。この自宅で保管してよいという法的な自由度こそが、墓や仏壇を持たずに手元供養を選ぶという選択肢を成り立たせている土台になっています。
墓を持たない場合の供養方法は永代供養墓から手元供養まで6種類
お墓を持たない場合の供養方法として代表的なものは、永代供養墓、合祀墓、納骨堂、樹木葬、海洋散骨、そして手元供養の6つに整理できます。
永代供養墓は、寺院や霊園が遺族に代わって永続的に管理・供養してくれる墓のかたちで、跡継ぎを必要としない点が最大の特徴です。合祀墓は、他の人の遺骨と一緒にまとめて埋葬するスタイルで、費用を抑えられる一方、後から個別に取り出すことができなくなる点には注意が必要です。
納骨堂は、屋内の施設に遺骨を安置する形式で、天候に左右されず、都市部でもアクセスしやすい立地に作られていることが多くなっています。樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花をシンボルとする自然志向の埋葬方法で、後継者が不要という理由で選ばれることが最も多い供養方法の一つです。海洋散骨は、粉末状にした遺骨を海に撒く方法で、自然に還るという価値観にフィットしやすく、費用も比較的抑えられる傾向にあります。
そして手元供養は、遺骨をお墓に埋葬・収蔵するのではなく、自宅など身近な場所に置いて供養する方法です。墓も仏壇もいらないが、遺骨をどこか遠くに手放してしまうのは寂しいと感じる人にとって、最もしっくりくる選択肢として近年注目度が高まっています。
手元供養の形はミニ骨壺と遺骨アクセサリー、ミニ仏壇の3種類
手元供養とは、ご遺骨をお墓に入れるのではなく、自宅などに置いて供養することをいい、自宅供養と呼ばれることもあります。仏壇のような大きな祭壇を用意する必要はなく、遺骨の全部、あるいは一部を、暮らしの中で無理なく寄り添えるかたちで保管するのが特徴です。手元供養が広がった背景には、継ぐ人がいない、置き場所がないという事情に加え、故人をいつも近くに感じていたいという積極的な選択としての側面もあります。お墓が遠方にあってなかなかお参りに行けない人にとっては、いつでも手を合わせられる距離に遺骨があること自体が、精神的な支えになるという声も多いようです。
手元供養の代表的なかたちの一つがミニ骨壺です。ご遺骨の一部あるいは全部を自宅に置いて供養するためのもので、陶磁器、ガラス、金属、木製など素材も多様であり、インテリアに自然に馴染むデザインのものが多く販売されています。仏具店だけでなく、雑貨店やインテリアショップのようなテイストで展開しているブランドも増えてきました。
二つ目は遺骨アクセサリーです。粉末化したごく少量の遺骨を、ネックレスのペンダントヘッドなどに収めるもので、素材はステンレス、チタン、シルバー、ゴールドなど幅広く、デザインのバリエーションも豊富にあります。常に身につけていられるという点で、そばにいてほしいという気持ちに最も直接的に応える方法だと言えるでしょう。
三つ目はミニ仏壇です。ご遺骨を納めた手元供養品を祀るための、コンパクトな祈りのスペースを指します。従来型の大きな仏壇を置くスペースがない住まいでも、棚の上や小さな台の上に置ける手のひらサイズのものから選べるため、仏壇はいらないが手を合わせる場所は欲しいというニーズに応えるかたちになっています。
手元供養の費用はミニ骨壺で数千円から
手元供養にかかる費用は、選ぶ種類や素材、デザイン、加工の複雑さによって大きく異なり、数千円程度から、こだわりの素材やオーダーメイドになると100万円以上になるケースまで幅があります。従来のお墓や仏壇の購入・維持にかかる費用と比べると、初期費用を大きく抑えられる点も、手元供養が選ばれやすい理由の一つです。
| 種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| ミニ骨壺 | 数千円〜数万円程度 |
| 遺骨アクセサリー | 数千円〜数十万円程度 |
| ミニ仏壇 | 2万円〜7万円程度 |
| 参考:一般的な墓石 | 100万円〜300万円程度 |
手元供養のメリットは費用を抑えつつ故人を身近に感じられる点
手元供養の最大のメリットは、費用を抑えつつ、故人を身近に感じ続けられる点にあります。墓地や霊園に足を運ばなくても、自宅にいながらいつでも手を合わせられますし、墓の管理費や年間管理料といった継続的な費用負担も発生しません。後継者の有無を心配する必要もなく、自分の代で完結できる供養方法として選びやすいのも特徴です。
仏壇のような大きな設備を必要としないため、住まいの広さやライフスタイルに合わせて自由に供養のスタイルを組み立てられる柔軟性も魅力になります。将来的に樹木葬や散骨など別の方法に移行したいと考えたときも、手元にある遺骨であれば対応しやすいという声もあります。
手元供養のデメリットは遺骨の管理と将来の相続問題
手元供養には見落とされがちな注意点も少なくありません。まず、遺骨の管理そのものに手間がかかります。遺骨を湿気の多い場所に置いたり、素手で直接触れたりするとカビが生える可能性があり、風通しの良い場所に設置し、雑菌が付着しないよう気を配る必要があります。地震や水害などの災害時に手元供養品が落下・破損したり、最悪の場合は紛失したりするリスクもゼロではありません。
次に、家族や親族間のトラブルに発展する可能性があります。故人の供養方法を施主だけの都合で決めてしまうと、後になって親族との間に摩擦が生じることがあります。手元供養の場合、家族以外の人にとってはお参りがしづらくなり、親族がお参りをしたいときには施主の都合を尋ねなければならず、タイミングが合わなければお参りができないという関係の溝が生まれるおそれもあります。決める前に、家族・親族へきちんと意向を伝え、理解を得ておくプロセスが欠かせません。
さらに大きな課題が、将来の管理と相続の問題です。手元供養をしている人自身が亡くなった場合、遺骨の処理は法定相続人でなければ勝手に行うことができません。生前に親しい知人へ管理を託していたとしても、法的にはその人が対応できるとは限りません。遺言は財産に関することにのみ効力が及ぶため、遺骨の処理方法について書き残しても、それ自体には法的な効力がないという点も知っておく必要があります。誰が、いつまで、どのように管理するのかという見通しを、あらかじめ具体的に立てておくことが重要になります。手元供養はまだ比較的新しい供養のかたちであるため、周囲の理解を得にくい場合もあります。だからこそ、始める前に家族の合意を丁寧に取っておくことが、後々のトラブルを防ぐ最善策になるのです。
手元供養が罰当たりという言説に教義的根拠はない
手元供養を検討していると、遺骨を家に置いておくのは良くないのではないか、成仏できないのではないかといった不安の声を周囲から聞くことがあるかもしれません。しかし、これらの多くは根拠のない誤解に基づくものです。
法律面については既に述べた通り、ご遺骨を自宅の屋内に安置すること自体は適法であり、禁じる規定は存在しません。否定的な意見の多くは、お墓に納骨して供養するのが当たり前という従来の慣習が根強く残っていることによるものであり、手元供養そのものに問題があるわけではありません。
宗教的な観点から見ても、多くの仏教宗派では、四十九日を過ぎると故人の魂は極楽浄土へ旅立つと考えられており、遺骨そのものに魂が宿り続けているという考え方はしません。つまり、遺骨をどこに安置していても、故人の魂の行方には関係がないというのが、仏教的な立場からの一般的な解釈です。遺骨を家に置いておくと成仏できない、罰が当たるといった言説は、多くが迷信であり、教義的な裏付けがあるものではありません。
もちろん、こうした考え方は宗派や地域の慣習、家族の信仰の度合いによって受け止め方が変わる部分でもあります。手元供養そのものが法律的にも宗教的にも問題視されるものではないとはいえ、年配の親族には従来の価値観が根強く残っていることも多いため、一方的に問題ないと押し切るのではなく、なぜその方法を選びたいのかを丁寧に説明し、納得してもらうプロセスを大切にしたいところです。
手元供養から永代供養へ移す際は個別供養期間の確認が必須
今は手元供養を選ぶが、将来的には永代供養墓や合祀墓など、しかるべき供養先にきちんと納めたいと考える人も多くいます。この場合に押さえておきたいのが、供養先ごとの個別供養期間と合祀のタイミングです。
永代供養では、納骨する際に最初から合祀されるケースと、一定期間は個別に安置された後に合祀されるケースの二通りがあります。個別供養期間は寺院や霊園によって差があり、契約期間として13年、17年、33年、50年など様々な設定があるほか、三十三回忌といった回忌の節目を一つの区切りとして合祀へ移行するケースも多く見られます。
将来的に手元供養から永代供養などへ切り替えることを考えているのであれば、契約前に個別に安置される期間はどれくらいか、その後どのように合祀されるのか、安置期間の延長は可能かを、書面できちんと確認しておくことが欠かせません。合祀されてしまうと、後から個別に遺骨を取り出すことは基本的にできなくなるため、この点を理解した上で契約することが重要です。こうした切り替えを検討する場合も、事前に親族へ相談し、合意を得ておくことが望ましいでしょう。合同墓や永代供養墓へ切り替える判断を施主だけで進めてしまうと、後々知らなかった、相談してほしかったという不満につながりやすくなります。
分骨は遺骨の所有者の許可が前提になる
手元供養の一部として遺骨の一部だけを自宅に残し、残りを別の場所へ納骨する分骨を選ぶ人も多くいます。分骨をする際には、いくつか注意点があります。
まず、分骨する前には必ず遺骨の所有者、多くの場合は喪主や祭祀承継者の許可を取る必要があります。いったん納骨してしまうと、その後に一部の遺骨を取り出すためには手続きが必要になったり、墓の種類によっては後から取り出せなかったりするケースもあります。一般的には四十九日の法要で納骨されることが多く、納骨までの日数が限られている場合もあるため、分骨を検討するのであれば早めにタイミングを見極めておく必要があります。
さらに、分骨した遺骨を将来的に別の場所へ納骨する可能性がある場合は、その納骨先の管理者に分骨証明書が必要かどうかを事前に確認しておくことが望ましいといえます。証明書がないと受け入れてもらえないケースがあるため、後々の選択肢を狭めないためにも、早い段階で確認しておくと安心です。
海洋散骨の費用は委託散骨で3万円から
手元供養と組み合わせて検討されることが多いのが、遺骨の一部、あるいは残りの遺骨を海に撒く海洋散骨です。散骨の方法については、現状まだ法的なルールが明確に整備されているわけではなく、節度をもって行うという基準は、実施する側の自主的な判断に委ねられている部分が大きいのが実情です。こうした状況を踏まえ、厚生労働省は散骨事業者向けのガイドラインを公表し、適切な形で散骨が行われるよう促しています。
海洋散骨を行う際に欠かせないマナーが粉骨です。遺骨を2ミリ以下程度の粉末状に加工することで、遺骨だと分かる形を残さないようにする配慮であり、業界内で広く定着している一般的なマナーとなっています。業者を選ぶ際には、粉骨費用が基本料金に含まれているか、土日祝日の割増料金やキャンセル料の有無といった内訳を細かく確認し、複数社で比較検討することが大切です。
| 散骨の形式 | 費用の目安 |
|---|---|
| 委託散骨(合同で船に乗せる) | 3万円〜10万円程度 |
| 合同散骨(複数遺族で乗り合わせ) | 10万円〜20万円程度 |
| 個別・貸切散骨(一家族のみ) | 20万円〜50万円程度 |
手元供養で一部の遺骨を自宅に残しつつ、残りは海洋散骨で自然に還すという組み合わせ方を選ぶ遺族も増えているようです。
仏壇を処分するには閉眼供養が必要
墓だけでなく仏壇も持たないと決めた場合、既に自宅にある仏壇や位牌をどう扱うかという問題も出てきます。仏壇や位牌には故人の魂が宿るとされているため、単に粗大ゴミとして処分するのではなく、僧侶による閉眼供養、魂抜きや御霊抜きとも呼ばれる儀式を行うのが一般的な流れです。
閉眼供養が済むと、魂の抜かれた仏壇はただの箱として扱われるようになり、一般ゴミとしての処分も可能になります。菩提寺に仏壇の処分を依頼した場合は、そのままお焚き上げをしてもらえることがほとんどです。菩提寺がない場合や、付き合いのあるお寺がない場合には、仏壇・仏具の引き取りとお焚き上げをセットで行っている専門業者や、僧侶手配サービスを利用する方法もあります。
費用の目安としては、閉眼供養のお布施は1万円から5万円程度、お車代として別途5千円程度を包むケースが多いようです。僧侶手配サービスを利用した場合のお布施相場は、3万5千円程度とされています。位牌についても同様に、閉眼供養やお焚き上げを寺院に依頼する場合、1万円から3万円程度が目安になります。位牌だけは手放したくないという場合には、位牌そのものを処分せず、コンパクトなミニ仏壇や手元供養用のスペースに引き続き祀るという選択肢もあります。仏壇という大きな家具は手放しつつ、位牌や遺影といった故人を感じるものだけを小さなかたちで残すという折衷案を選ぶ人も少なくありません。
墓じまいには改葬許可証の取得が必要
既にお墓があり、それを閉じて別の供養方法に切り替える場合には墓じまいという手続きが必要になります。墓じまいとは、墓石を撤去し、墓地を管理者に返還することを指します。
手続きで必ず必要になるのが改葬許可証です。現在お墓に納骨されている故人の情報や改葬の理由などを記載した改葬許可申請書を、墓のある市区町村役場に提出し、発行してもらう必要があります。申請にあたっては、改葬許可申請書のほか、現在の墓地の管理者が発行する埋葬・収蔵証明書、そして新しい納骨先の管理者が発行する受入証明書が必要です。現在の墓の名義人と申請者が異なる場合には承諾書、故人の戸籍謄本や申請者の身分証の提出が求められることもあります。
墓じまいの手続きの流れは、大まかに、家族間での合意形成から始まり、改葬先の選定、行政手続き、閉眼供養、墓石の撤去工事、そして新しい供養先への納骨という順で進み、全体でおよそ2か月から6か月程度かかるのが目安です。
費用面では、墓じまい全体で総額30万円から300万円程度と、非常に幅があります。内訳としては、墓石の撤去・原状回復工事費用に加え、新しい供養先の費用が大きく影響します。
墓も仏壇もいらないという結論に至った場合、こうした新しい供養先を用意せず、そのまま手元供養や散骨に切り替えるケースも多く、その場合は墓じまい費用のみで完結することになります。なお、墓じまいの費用については、自治体によって補助金制度が設けられているケースもあります。無縁墓化を防ぐ目的で墓じまいを後押ししている自治体であれば、事前に窓口へ確認しておくと負担を抑えられる可能性があります。
墓じまいのトラブルは離檀料と親族への相談不足が原因
墓じまいや仏壇じまいは、進め方を誤ると親族間の関係悪化や、想定外の出費につながることがあります。よくあるトラブルの一つが、親族との話し合いが不十分なまま手続きを進めてしまうケースです。墓の継承者が独断で墓じまいを進めた結果、他の親族がお参りに訪れて初めて墓がなくなっていることに気づき、大きな不満を招いてしまった、という事例も報告されています。
寺院との関係でも注意が必要です。檀家をやめる際に寺院へ支払う離檀料は、お布施の相場としては3万円から20万円程度とされていますが、中には相場を大きく超える金額を請求されるケースもあり、支払いに応じない限り離檀を認めない、あるいは遺骨を引き渡さないといったトラブルに発展することもあります。
費用面でも、兄弟や親族が当然費用を分担してくれると考えて進めたところ、負担を断られたり、そもそも墓じまい自体に反対されたりして計画が滞ってしまうケースがあります。こうしたトラブルの多くに共通するのは、決めてから伝えるのではなく決める前に相談するというプロセスが欠けている点です。決定権を持つ立場の人であっても、事前にひと声かけておくだけで、親族の受け止め方は大きく変わります。お墓の維持管理がどれだけ大変か、費用や労力の実情を共有することで、親族側も自分たちの問題として捉えやすくなり、結果として合意形成がスムーズに進みやすくなります。墓も仏壇も両方持たないという結論に至った場合ほど、従来の慣習から外れる分だけ、周囲の理解を得るプロセスを省略せずに丁寧に進めることが、後悔のない選択につながります。
墓も仏壇も持たない供養を選ぶ鍵は家族との事前共有
墓も仏壇もいらないという選択自体は、法律上も社会の趨勢としても、決して特殊なものではなくなっています。ただし、それを実行に移す際には、いくつか意識しておきたいポイントがあります。
一つ目は、自分だけで決めずに、家族や親族と早い段階で意向を共有することです。手元供養や墓じまいをめぐるトラブルの多くは、決めた後に周囲へ伝えたことが原因になっています。事前に相談し、理解を得ておくプロセスを省略しないことが、後々の関係悪化を防ぐ最大のポイントです。
もう一つは、今の自分だけでなく将来の管理まで見据えて選ぶことです。手元供養は始めるハードルが低い一方、自分自身が亡くなった後に遺骨をどうするかという次の代の問題が必ずついて回ります。永代供養墓や樹木葬など、最初から跡継ぎを前提としない供養先と組み合わせることで、将来的な不安を軽減できるケースも多いようです。
そして費用と気持ちのバランスも欠かせません。手元供養は費用を大きく抑えられる方法ですが、安さだけで選ぶと、後になってもっとちゃんとした供養をしてあげればよかったと感じる遺族も一定数います。数千円のミニ骨壺で十分だと感じる人もいれば、多少費用をかけてでも思い入れのある形見として残したいと考える人もいます。自分たちの価値観に合ったかたちを、焦らず選ぶことが大切です。
墓も仏壇もいらない選択は法律的にも宗教的にも自由
墓も仏壇も両方いらないと考える人が増えている背景には、少子高齢化や核家族化による後継者不足、住宅事情の変化、そして供養に対する価値観の多様化があります。遺骨を自宅に置いておくこと自体は法律上何ら問題がなく、手元供養、樹木葬、永代供養墓、納骨堂、海洋散骨など、跡継ぎを前提としない供養の選択肢は着実に広がっています。
中でも手元供養は、ミニ骨壺、遺骨アクセサリー、ミニ仏壇といった多様なかたちで、費用を抑えながら故人を身近に感じ続けられる方法として注目度が高まっています。ただし、遺骨の保管や管理の手間、家族・親族間の理解、そして自分の代が終わった後の管理・相続の問題まで見据えておく必要があります。
墓じまいや仏壇じまいを行う場合には、改葬許可証の取得といった行政手続きや、閉眼供養にかかる費用と時間も踏まえて計画的に進めることが欠かせません。離檀料や親族間の合意形成をめぐるトラブルは、決めてから伝えるのではなく決める前に相談するという順序を守るだけで、その多くを未然に防ぐことができます。
両方いらないという結論そのものは自由に選んでよいものであり、法律的にも宗教的にも、それを妨げる根拠は存在しません。大切なのは、その結論に至った理由を家族と共有し、将来にわたって誰がどう向き合っていくのかまで含めて考えておくことです。手元供養、樹木葬、永代供養、海洋散骨など、選択肢は一つに絞る必要もなく、組み合わせて使うこともできます。形式にとらわれず、家族との対話を重ねながら、自分たちに合った供養のかたちを見つけていきたいところです。








